松下幸之助さんが説いておられたことの一つに、「生成発展の法則」というのがあります。
幸之助さんのご著書には、
“この大自然、大宇宙は無限の過去から無限の未来にわたって絶えざる生成発展を続けているのであり、その中にあって、人間社会、人間の共同生活も物心両面にわたって限りなく発展していくものだと思うのである。”(参考:『実践経営哲学』)
とあり、曰く
“宇宙、社会とは、限りなく生成発展をして行くもの”。
この「法則」は、多くの企業経営者が信奉するものなのですが、
時として、自己暗示の創始者であるエミール・クーエが推奨した「“Day by day, in every way, I’m getting better and better.”(日毎あらゆる面で私はますます良くなっていく)」という呪文のように使われたりする、「法則」というよりは「信念」に近いものでもあります。
ともに有効で、活用の幅が広いものではあるけれど、個別具体の状況には利用しにくい、というか。
このことについて、実はその
「宇宙、社会は限りなく発展するものである」
という考え方を、より具体的に「法則」として個別具体の事象に利用・活用する方法が東洋思想にはあり、五行の図にそれを見つけることができるので、ご紹介いたします。
五行の図というのは、
東洋思想の根本概念を示すものですが、
東洋思想ではあらゆるものが五行で構成され、それが生成発展を繰り返していると考えられており、
まさに「生成発展の法則」を図示したものです。
前に、「世界は相似形の集まりである」ということを書いたことがあるとおり、
世界を見渡せば、黄金比やフィボナッチ数があちこちにあふれていることはよく知られていますが、実は五行も同様に世界中にあふています。
但し、前者が視覚的に認識できる相似である一方、
五行の図というのは一種の「構造」であり、物事が発展する「秩序」の型(相似形)を構成しているものなので、視覚的な認識ができず、それと認識するには予めその構造・秩序のベース(五行の図)の知識がなければそれと認識できないものでもあります。
五行の図は、構造であり秩序なので、様々なものに応用できます。
人間関係や組織の構成、人生を切り拓くルートや物事の選択、健康の増進など、高次元のとのにも展開することが可能で、
この構造・秩序に則ることにより、ある意味オートマチックに生成・発展に向かうことができます。
(黄金比やフィボナッチ数も、もしかするとそういう使い方があるのかもしれません。)
使い方について、分かりやすいところで例えばこれを人間の成長に応用するなら、
身内や休息の場はこれを守ることが大切で、
目下や弱い者は刻すことなく育むこと必要があります。
一方、社会で対峙する人とは伍して勝負するのが望ましく、
親や目上についてはそれを追い越していく気概がなければ成長することはできない、
ということになります。
これを別の角度から捉えれば、
友人知人とは戦うことが必要ですが、
それが親友であれば絶交する前に叩き斬るようなことをするのは仁義にもとり、
目下を切る場合にはそれと同等の者にさせなければ自らの成長を損なうという、ともいえます。
これを会社組織にあてはめると、
生成発展に向かいたいのであれば、
上司というのは配慮は必要ではあるものの、突き上げてしかるべきものですし、
尊敬できない友達や意見の合わない同僚との安易な馴れ合いというのは自らの身を持ち崩す原因となります。
部下や目下をいじめることは自分の未来を損なうことに通じ、
補佐や配偶者、サポーターというのは最後まで守るべき砦、ということになります。
こうしたことは、
私たちが馴染んだ戦後教育による人間関係の在り方とは異なりますが、
東洋思想の五行の図に照らせば、それが「自然の流れ」であり「生成発展の法則」なので、これを犯すと停滞・衰運に向かいます。
ちなみに、
現代のフラットな社会ではあまり見ることが少なくなった在り方ですが、
例えば体育会系の運動部や伝統的な大きな組織においては今なお息づいている在り方でもあります。
使いこなすには、五行の配当を知り、その構・構成を正確に把握することが必要なので、ちょっと難解な印象を持たれるかもしれませんが、
戦前まではこうした思想ご日常的に活用されていたことを考えれば、改めてその価値を見直し、活用してみても良いように思います。
こうした取り組みが、日本古来の文化の醸成ばかりでなく、経済の発展や国力の向上につながる、ということもあるのではないか、と考えているこの頃です。