ずいぶん前に、
海外ドラマ『リベンジ』において劇中で死んでしまう役というのは、
「自分の人生を生きていない」役の人だ。
…ということを書いたことがあります。
エミリーになり替わって自分を偽りジャックと出来婚を決め込んだアマンダ、
野心を抱きつつも本人は大した努力もないまま上流社会に紛れ込んだデクラン、
そして、元々は詩人を志していたのにそれを貫くことなく富豪の実家の家業を継承したダニエル。
彼らは、「自分の人生の主人公」たりえない生き方をした先において命を失うことになったと思うのですが、
最近、海外ドラマ『ダメージ』の劇中で死んでしまう役というのも、
そういう「自分の人生を生きていない」役の人だな、と思いました。
※以下、ネタバレ注意!
例えば、主人公パティの右腕であるトムとか、
隠れゲイの弁護士であるレイ・フィスクとか、
あるいは、事件のキーを握るグレゴリーなどもそうなんじゃないかな。
『ダメージ』は、
アメリカの弁護士が選ぶ『弁護士ドラマ』において堂々一位に輝くドラマらしいのですが、
かなり力の入ったキャストからも分かるとおり、
構成や伏線がいい加減にできているはずもなく、
いたるところに、
「森羅万象の仕組み」「人生の仕組み」「モノゴトの仕組み」に則った伏線が張り巡らされていてとても勉強になります。
ちなみに、敵側の弁護士役であるレイ・フィスクはラストにおいて自殺をするのですが、
その直前の時期などは、言葉の発声が曖昧(な演技)になっていて、あぁ見事だな、と思いました。
前に「宿命を逸れている人の特徴」の一つとして、
「言葉の発声が曖昧」ということを挙げたことがありますが、
レイ・フィスク演じるジェリコ・イヴァネクは、イェール大学卒業というその知的観察眼をもって、そのことを知っていたのだろうと思います。
ちなみに、イヴァネクは、イェールを出た後、ロンドンの LAMDA(イギリスで最も古い演劇学校)で学び、数多くの作品に出演、トニー賞に3度ノミネートされた実績があり、
この『ダメージ』でもエミー賞ドラマ部門助演男優賞を受賞しておられますが、
先に挙げたような細かい演技がいたるところで光っており、納得のところ。
すぐれた文学というのは現実を適切に捉えたものですけれど、
名作と言われるドラマも同様だなぁと思います。
なお、このドラマの原題は『damages』で、その意味は「被害、損害賠償額、代価」です。
その「被害、損害賠償額、代価」の示すその意味は、ドラマで展開される裁判におけるその被害・損害賠償・代価」に留まりません。
見る人が見れば、そこには、
「人生の成功に必要な代価・代償とは何か?」
という裏テーマがあることに気づかれるだろうと思います。
なぜエレンの恋人は惨殺されたのか?
なぜパティの息子は破壊的な道を進むのか?
よくよく見れば、いずれも必然であることが良く分かります。
以上はドラマ『ダメージ』のお話ですが、
リアルな世界の観察においても、同じようなことが見て取れる、ということはよくあります。
できるだけ「現実に執着することのない視点」、
「個人的な感情を付着させることなく距離をキープした視点」、
…でもって眺めれば、
いろんなことに気づきやすくなるように思います。
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