任怨分謗（にんえんぶんぼう）という言葉があります。
任怨とは、
大事を断行しようとするときには必ず誰かしらの恨みをかうのが当然なので、
そういう怨を恐れていたのでは何もできない、
恨みに任ずるものでなければ大事などなせるものではない、という意味、
分謗とは、
何かしら新しいことをやっていれば、必ず何かと非難・謗（そし）りを受けるものなので、
そういうときは謗りを分け合って、決して自分だけ善人ぶってはいけない、という意味なのだそう。
この耳慣れない言葉は、
「三事忠告」という、大臣・地方長官・司法官（警察官）の心得が記された書物の中にある言葉なのですが、
大臣や行政官でなくとも、
何かしらコトを成そうと思ったら、こうした任怨分謗（にんえんぶんぼう）の心構えは大切なのだろうと思います。
…とはいえ、
世の中には、こういう任怨分謗（にんえんぶんぼう）に耐えられる人と耐えられない人がいるのも事実で、
実際のところを言えば、
それに耐えうる人であれば、他人からのそうした怨嗟や誹謗中傷もうまく使って世を渡ることができる一方、
それに耐ええない人であれば、命をはかなくしてしまうこともあります。
その意味では、誰しもが任怨分謗（にんえんぶんぼう）を励行すべきかといえばそうではなく、
場合によっては「逃げるが勝ち」ということもあり、
世の中、「根性論」で正面突破すべしということばかりが説かれがちですが、
うまく逃げる、知恵を絞る、ということも、
正面突破と同じくらい、あるいはその倍くらい、重要な戦略と認識しておくべきであろうと思います。
正面突破で、怨嗟を背負い、誹謗を受け止めるべきか否かは、
横線のエネルギーがあるかどうか、そして根っこがあるかどうかで見るわけですが、
実際には、その横線のエネルギーがどれくらいあるか、
あるいは、その根っこがどこにあるかにもよるので、
一概に、こう、という判断はできませんが、
基本的に、そうそうなんでも真正面から受け止めることができる人ばかりではないですし、
それが賢い在り方ともいえないわけで、
だとすれば、
任怨分謗（にんえんぶんぼう）の大切さは念頭に置きつつも、
うまくかわす、うまくそらすための知恵や戦略を自分の中に持っておくのが良かろうと思います。
ちょっと言い方があれですが、
「相手にするだけ無駄」ということもありますし、
世の中を見回せば、「関わってしまうことの危険」というのも多くあります。
ここぞというときにエネルギーを温存するためにも、
任怨分謗（にんえんぶんぼう）を戦略的に行う方法を備えておくのが適切な処世術と考えます。
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