金烏玉兎庵

なぜ澤瀉屋は高学歴志向なのか?

Photo by 五玄土 ORIENTO on Unsplash

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猿之助さんの一件があって以来、澤瀉屋一門の命式をあれこれと調べています。

おそらく、算命学を勉強する者にとっては、
これほど勉強になる事例はないのでは…と思いますがどうでしょうか。

人が亡くなっているのに勉強ですか…という指摘など、あろうとは思いますが、
その死すらも、澤瀉屋にとっては 「必要な犠牲」であったといえば、どうでしょう。

現代日本に生きる私たちが思うよりも、
物事というのは、はるかに精緻な必然性をもって起こっています。

今回の件も、そういう「精緻な必然性」の一環であるということです。

一般の方であればいざ知らず、
算命学の担い手であれば、
いかにそれが重大な事件や事象であったとしても、
あるいは、いかにその対象に愛着や思い入れがあったとしても、

高い視座、視点を維持しつつ、 一極二元のフレームワークでもってその出来事を捉えねばならず、
そうした姿勢なくしては、
コトの本質を見失うばかりか、誤った解釈の先に、打つべき対処を間違えて、致命的なことにもなり得るので注意が必要と思います。

さて、猿之助丈ご本人にかかることについては、
センシティブでもあり、note の上級編のほうに書き始めました。
歌舞伎界が因縁のたまりやすい構造であるその説明から、
今回の事件に至った要素を順番に説明し始めましたので、興味のある方はご覧くださいませ。

こちらでは、それとは別に、
なぜ、澤瀉屋が高学歴志向なのか?ということの説明をしておこうと思います。

これはつまり、澤瀉屋が高学歴志向なのは必要にして不可欠な背景があった、
それもまた「精緻な必然性」の一環であったということです。

さて、ご承知の方も多いと思いますが、
いわゆる伝統的な名門の歌舞伎役者の方々は、だいたいにおいて高学歴ではありません。

成田屋の市川團十郎白猿さんは、青山学院高校で留年して堀越高校の芸能コースを卒業、
音羽屋の尾上菊之助さんは青山学院大学中退、
高麗屋の松本幸四郎さんは暁星高校卒業後、國學院大學中退、
その息子さんである松本染五郎さんは先日、青山学院大学付属高校を中退されました。

一方、澤瀉屋はといえば、
猿翁さん、その弟の段四郎さん、そして今回の事件の猿之助さんは慶応義塾大学卒、
市川中車さん(香川照之さん)は東京大学卒、その息子さんである団子さんは青山学院大学在学中です。

なぜ、伝統的な一門はだいたいにおいて高学歴ではないのか?といえば、

本質的な意味で伝統芸能の担い手には、
学歴というのは不要であるばかりでなく、ことの仕組みからして学問学歴などは無用の長物であるからです。

歌舞伎でなくとも、茶道にせよ華道にせよ、
伝統芸能を多少でも嗜んでおられる方であればお分かりと思いますが、

伝統芸能というのは「型の継承」にその本質があり、
「型」を歪めることなくそのまま継承していくことにこそその意味と役割があります。

例えば「にらみ」というのは成田屋に代々受け継がれるお家芸(型)ですが、
継承者が、余計な知恵をつけてしまえば、

「いや“にらみ”などは合理的ではない。
それよりもっと観客に訴求する所作を考案して“にらみ” はやめよう」などと、
代々受け継がれるお家芸(型)を変えてしまったりすることになります。

「頭が良い」ということの本質はそういうことで、

学歴を得ること、知恵をつけるというのは、
現代に在ってはさも良いことのように言われがちですが、
あるものを有るがままに受け入れたり、
物事を変えることなく継承したりする姿勢を損なうという面もあり、

いってみれば、狡さや小賢しさにつながるのが 「知恵・知識」であるので、
「考えるな、感じろ」という世界である伝統芸能の世界においては、
そういう「知恵・知識」というのは無用の長物であるといえるのです。

これは例えば、「絵を描く」というときに、
知恵・知識があると、売れるかどうか、ウケるかどうか、技術的に正しいかどうかを意識しながら絵を描く一方、

知恵・知識がないと、あるがまま感じるがままを描くことができ、そこには自然の芸術が出来上がるのと同じお話です。

さて、ではなぜ、澤瀉屋は学歴重視なのかといえば、
三代目猿之助(現猿翁)が、24歳で三代目を襲名した直後に、
祖父である二代目猿之助、父である三代目段四郎を亡くしたために、
本来、芸の継承にあたり「考えずに感じる」ことで導いてくれるはずの存在がいなかったからです。

知恵・知識ではなくひたすらに、
型を身体で覚えていくのが古典芸能の世界ですが、
その型の手本となる存在がなければ、古典に学び、自ら考えて芸を開くしかないわけで、

そうやって家の芸を確立したのが三代目猿之助(現猿翁)であり、
以降、澤瀉屋は知恵・知識を下敷きとした創造性あふれる舞台を持ち味として歌舞伎界での存在感を確立してまいりました。

つまり、
「知恵・知識を下敷きに創造性を発揮せよ」というのが澤瀉屋の家訓のようなものである、
ゆえに、澤瀉屋は高学歴志向となったのです。

実際、今回の事件の当事者である四代目猿之助さんも、
たいへんな読書家といわれますが、そうした知恵・知識を背景に創造性あふれる舞台をつくってこられましたね。

それにしても、
因縁深いな、と思うのは、

猿翁さんというのは、
そんなふうに「手本にできる親がいない」世界で道を切り開いてこられた、
そういう「手本にできる親がいない」からこそ、澤瀉屋の地位引き上げる知恵を絞り出し、今に至る澤瀉屋を築かれたわけですが、

おそらくは、
中車さん、団子さんも同じことをせねばならない、ということ。

中車さんの命式を観れば、
親をアテに出来なかったからこそ今に至る活躍が実現できたこと、
苦労や口惜しさが創造性を生み道を開いてきたことが現れていますが、

知恵を捻り出して一門の発展を支えられますことを心より応援しております。

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