久しぶりに美術展に行って参りました。
はじめようか、天才観測。
『本阿弥光悦の大宇宙』。
なんとなく、
「本阿弥光悦」と「大宇宙」は必ずしもマッチした印象ではないのですが、
単に、あの大胆さと精密さの絶妙なアンバランスさが、不加算的な永続性を示しているような気がする、
光悦のそこに強い魅力を感じて足を運んだのでした。
本阿弥光悦は
刀剣の権威の家系に生まれ、
その家業の一芸に秀でたその一芸（刀剣の目利き）をもって人脈を広げ、
ついには芸術家仲間と「集住」し、
その仲間たちとの交流から技を得て、自らの芸術の奥行きを広げた人ですが、
なんとなく、その生き方が、
現代日本の最前線で展開されている、個性あふれる人たちの姿に重なったのは、
たぶん、偶然ではなく、それがキュレーターの狙いだったのではないかな？と思いました。
印象に残ったことがいくつかあります。
まず、「折り紙つき」の語源となった「折り紙」と「印」。
実物をみてその存在感に心が掴まれました。
また、前田利長の依頼で刀剣書を書いたことで目利きとして光悦が評価が高まった、のいうお話。
やはり、名を為すにはどこかできちんと「成果物」を出さねばならないのだな、
‥と、先日、成果物をお断りしたそのことを少し反省しました。
（まだ、名を為す段階にはないので、成果物を作成する予定はありません）
それと、結局、こんなふうに後世に残るものというのは、
そこに知的好奇心をくすぐる要素をもつものなのだな、ということも、深く心に刻まれた気がします。
例えば、
細かさと大胆さの同居、
モチーフを限定して近接拡大することで躍動感を見せるその感性は、
人間の本源的な知的好奇心に訴えてくるもので、
人間は、今も昔もこれからも、こういうものが好きだよね、と感じましたがどうでしょう。
光悦という人は、
歳を重ね評価を確立してなお、そこに安住することなく、
終生、旧来からの脱却と様々な技への挑戦を続けた方でもあるのですが、
その進化、新たなるものへの真剣さに、
見習うべき姿を見るとともに、
大したことも為す前に安住に向かおうとすることの愚についても考えさせられました。
そういえば、この光悦展は、書が半数を占めるのですが、光悦という人は、
若い頃の筆と晩年の筆も相当異なるのですけれど、
一巻の書のなかで豊かな文字の変化を見せる方でもあったようで、
日蓮上人の安定感のある一定した文字と比較しながら、
本阿弥光悦という人は身弱の人であったのかもしれないな、と、そんなことを考えました。
身弱の人って、有形の世界においては安定感を欠くものですが、
それは存在感の安定ばかりでなく、文字の安定などにも見て取れます。
なので、身弱の人はけっこう簡単に筆跡が変わります。
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