海外ドラマ「ブラックリスト」に見る交渉の真髄と陰陽のバランス

海外ドラマ「ブラックリスト」は、ユダヤ商人の思想を学ぶには素晴らしい教材です。

現代社会におけるルールや法律というのは、弱者保護を建前としながら一部の人にとって利権となる、そんな仕組みですが、
このドラマの主人公、レディントンはそういう小狡い仕組みカツンと指摘しながら、すり抜けていく(=脱法行為、ですが)その様子が小気味よくもあり、家事の間などで繰り返し流しています。

 

そんな「ブラックリスト」においてレディントンが語る『交渉の真髄』、相変わらず、本質をついています。

『この世に敵味方はいない。
いるのはプレイヤーだけだ。

交渉に必要なことはあのタンゴの中にすべてある。
初めは敵同士だ。
互いの欲しいものを待つ。

力量を見定め、リスクを計算し、境界線を引き、その境界線を破ろうとする。
官能的なバトルだ。
暴力と官能が、刃の上で均衡を保つ。

何かを奪うためには、何かを与えなければならない。
これぞまさに交渉の真髄といえる。

交渉はポーカーゲームではない。
ミロンガだ。タンゴだよ。誘惑だ。』

 

この短い説教の意味を理解し、使いこなせる人がどれだけいるか分かりませんが、
優秀な営業マンとか政界のドンみたいな人は、たいていこうした技術を駆使しているように見えます。
(政界のドンを知っているわけではないですが)

例えば、二階さんがドンかどうかは別にして、二階さんなどはそういう空中戦的な交渉、取引を駆使しているイメージ。

 

立場が変われば敵味方は入れ替わるし、
利益や目的のためには大嫌いな人とも組む、一度組んだら裏切らない限り大切にするけど、裏切ったら血を見そうな感じです。

そして、闇雲に奪い取る、搾取する、騙し取るということをせず、
何かを得るために何かを差し出すというフェアトレード
悪因が何につながるかを知っていれば、確かにどんな相手であれ、そうするのがベターということになります。

そこで取引されるのは、
互いの本能を刺激し欲求を満たすもの。
お金ではありません。
お金は単なるシンボルなので、本質的には取引の対価になり得ない。

また、ポーカーは騙し合いなので、
そういうのは長期的な繁栄にはつながりませんよ、ということです。

 

卑近なところでいえば、
中身のないブログのリンクをFacebookに貼ってPVを稼ぐとか、
キャッチーな呼び文句で人を誘い込む主催者の自己満足的なイベントとかは、
人の時間を騙し取るという意味でポーカー的で罪深いなぁと思いますが、
そういうのはだいたい廃れていっている印象です。

 

何かを得るには何かを差し出す、
これは陰陽のバランスともいえるわけですが、
この均衡を精緻に守っている人は、
「義理を果たす」
「借りを返す」
ということを、きちんとやっていたりします。
そしてそれは、
どうしても許せない相手からは何一つ受け取らない、
何かを贈られたらその手数料見合いを乗せてきっちり返す、
という態度として現れたりします。

 

長く商売をしている商売人とか、
長く土地を収めている地主さんなどはそのあたりとてもはっきりしています。
そして、
現代社会で核家族に育った人などは、
それと知らずに悪因に絡みとられていったりします。

 

偉そうに書いていますが、
私も悪因を作ってしまったな、と思うことは多々あるので、今後、精進しようと思っています。

 

余談ですが、
ブラックリスト」のこの話が出てくる回の終盤に、レッドの、
「狂ったこの世界で狂うなら、気は確かだ。クロサワ。」
という発言があります。

この言葉は元々、シェイクスピアリア王に出てくる言葉ですが、
黒澤明「乱」にも出てきます。
レッドの言動には端々に日本への敬愛、東洋思想的な世界観への憧憬が感じられるのですが、この言葉を敢えてクロサワの作品からの引用として語ったこれもその一つ。

Photo by 五玄土 ORIENTO on Unsplash

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