教える側が生徒を求めるのではなく、
生徒が先生を求めて教えを乞うのが本来の教育の姿である。
…とは、易経の山水蒙の卦(か)に説かれている学びの在り方ですが、
昨今は、算命学の先生でも一生懸命、広告・集客に励まれ、
あろうことか、高尾宗家の名前や、自分が学んでいる先生を広告塔のようにして、
集客しようとされる不埒な先生もおられて、
それが若い先生であればまだ良いのですが、
よいお歳の先生がそのようなことをされていると、
たいへんに残念に思います。
せめて、高尾宗家のお名前を掲げるなら、今少し、東洋思想の担い手としての矜持をお持ちいただきたい、
…というか。
いや、余計なお世話ですが、そういう様子を拝見しつつ、
広く大衆に訴求しようとするのはけっこうながら、
色んなものを歪めておれるその因縁を背負われないか心配に思う最近です。
というのも、その先生のまわりにおられる方には、
同じような我田引水の傾向、同じような歪みが見られるからです。
マズローの五段階欲求、というのをご存時の方も多いと思いますが、
人間というのは、
生理的欲求が満たされて初めて安全への欲求を感じ、
安全への欲求が満たされて初めて所属と愛への欲求を感じ、
所属と愛への欲求が満たされて初めて承認への欲求を感じ、
承認の欲求が満たされて初めて自己実現の欲求を感じるのだそうで、
この構造に基づけば、
集客するために、色んなことを「盛る」というのは、承認の欲求に基づくものであり、
つまるところ、
その先生は、自己実現=東洋思想を担うという自己の実現のためではなく、
自分の承認の実現を目指されているのだな、ということが伝わってきて、残念に感じる次第。
さて、なぜそんな、「余計なお世話」なことをここで書いているのかといえば、
そんなふうに、自己の実現ではなく承認のほうに夢中になる傾向というのは、
別にその先生に限らず、割と最近の多数派なのかもしれないな、と思ったからです。
いい年をして、と言いましたが、
まわりを見渡せば、40代、50代になっても承認欲求で動いている方は少なからずおられるわけで、
むしろそれが当たり前でしょう、と、感じる方もいるのではないでしょうか。
これについて、算命学という観点でいえば、
承認欲求でもって世の中に出て行く、というのは、
「悪い」こととは限りませんが、一般的には他人に違和感を与える傾向にあるもので、
かつ、適切なアプローチでそれをしないと空回ることの先に転げ落ちるようなことになります。
なぜ、承認欲求が他人に違和感を与えるのかといえば、
「承認されたい」、「褒められたい」というのは、牽牛星の欲求であるので、
それは内向きの世界において発揮されてしかるべきものであり(西方を定位置とする欲求であり)、
それを外側の世界、社会・世間(東方の世界)に向けて出すと、不自然さの先に違和感を与えることになるからです。
一方、自己実現とは貫索星の欲求であり、
貫索星というのは東方を定位置とする欲求であるので、
外側の世界、社会・世間(東方の世界)に向けて自己実現をしていくことは、
自然であり、大いに世の中に受け入れられやすいのだということです。
算命学というのは、いうまでもなく「自己実現」のための学問です。
そして、社会・世間において、自分が生まれ持つ能力・才能を発揮して、その命を活かすこと、
それを実現していくための学問であることを念頭に、
皆さまにおかれましては、承認欲求をひとまず棚に上げて自己実現に向かわれますよう。
自己実現を果たされましたら、欲求を抱かずとも承認されます。
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